かつて人気を博したあの番組の出演者たちは今・・・。

一世を風靡したマネーの虎のその後

少し古いネタにはなるが今回は「マネーの虎」というテレビ番組について書きたいと思う。

「マネーの虎」といえば2004年に終了。その後十数年が経過するが、その臨場感に熱狂した記憶が未だに鮮明だという人は少なくないはず。

司会は二枚目俳優として知られる吉田栄作。出演者には豚骨ラーメンでムーブメントを巻き起こしたなんでかんでん川原ひろし社長。数々の飲食FCパッケージを世に送り出した小林敬社長。リサイクルショップ倉庫生活館を全国的に展開し、ホームレスからその後年商120億まで上り詰めた堀之内九一郎社長等々…。

まさに「マネーの虎」と呼ぶに相応しい剛腕経営者ぞろいだ。

「マネーの虎」ではそんな億単位の年商をあげる「虎」たち自らが審査員となり、起業を目指す応募者たちの事業計画やプレゼンを評価する。応募者たちは見事虎からの承認を勝ち取れば虎たちがのポケットマネーで出資が受けられるというわけだ。

出演者はビジネスだけでなく番組でその虎っぷりを発揮していた。出演者の事業計画が少しでも気に食わなければ完膚なきまでにこき下ろす。だがその後マネー成立となれば虎たちは応募者にありったけの拍手喝さいを送った。

視聴者はそこで繰り広げられる数々のドラマに釘付けとなった。近年そんな過去の人気番組「マネーの虎」が再び脚光を始めている。

当時否定された応募者たちから成功者が…。

なぜ最近になってこの「マネーの虎」がまた注目を集めているのか。実は当時辛辣な言葉を浴びせられた応募者の中に成功者が出ているのだ。

チャンコ増田の抱き枕

チャンコ増田はアイドルやアニメキャラの抱き枕を作りたいとして融資を希望した。が、「オタクなどと付き合いたくない」「気持ち悪い」など、虎たちから放たれる言葉はどれも人格否定に近いものであった。その後チャンコ増田のアイデア商品は売れに売れ、大ヒット商品となった。オタクのマーケットは当時より確たるものとして形成されている。

利益よりもお客様満足重視のパスタ屋

利益よりもお客様の満足度にこだわったパスタ屋さんをしたいと夢見る応募者。虎たちからは「もっと原価を下げないと利益があがらない」と散々に否定された。その後美空ひばりの孫である加藤社長からの融資を受けお店をオープン。現在も「ラ・パットーラ茅ヶ崎」という店名で順調に営業を続けている。

ピコ太郎として大ヒット古坂大魔王

PPAPで空前の大ヒットを飛ばしているピコ太郎(古坂大魔王)。2017年11月のトランプ大統領が来日した際には日米両首脳の夕食会にも招かれた。そんな彼も実はマネーの虎に出演し、ロンドンで世界デビューするための資金として融資を希望していた。まさかその後自力で世界デビューするとは虎たちも夢にも思わなかったことであろう。

当時のお茶の間での視点

もしかするとマネーの虎の視聴者の中に、虎たちと同じ視点で「事業プランがなっていない。」「考えが甘い。」と応募者たちをみていた人もいるかもしれない。
ただ現在このように成功している彼らをみていると先見の明がなかったといわざるを得ないだろう。かくいう私も少なからずそういった見方をしていたかと思う。

続いては当時マネーの虎に出演していた社長たちのその後にも注目したい。

社長たちのその後-失敗と転落-

あれほど威勢のよかった虎たちだが、そのほとんどが事業に失敗し転落人生を送っているという…。

なんでんかんでん 川原ひろし社長

ラーメンブームの火付け役となったなんでんかんでんも、急激に拡大したことが仇となり次々と閉店。出店スピードに対しマネジメントが追い付かなくなったということか。幸い倒産は免れたため、現在では借金に追われながらも再起を図っている。

リサイクルチェーン大手「生活倉庫」 堀之内久一社長

堀之内社長が立ち上げたリサイクルチェーン店「生活倉庫」。一時は年商120億とまで謳われていました。しかしその後ネットオークションの台頭により業績が悪化。その後15億の借金を背負うまでになっています。

オートトレーティングルフトジャパン(株) 南原竜樹社長

英国MGローバー日本として、輸入販売を行っていたが、本家が経営破綻したことを受け、大量の在庫を抱えることとなってしまう。一時は負債総額が50億円にも上ったという。現在は新規事業でどうにか借金をチャラにし、(株)LUFTホールディングスの代表として復活を遂げた。

㈱小林事務所 小林敬社長

元料理人から起業し、飲食FC展開で成功した小林社長であったが、兼ねてからの夢であった食のテーマパークをオープンさせたことで失敗。無理な投資によりキャッシュフローが追い付かず僅か8カ月で破綻してしまう。

社長たちはなぜ失敗したのか

当時マネーの虎の顔といえる出演者であった虎たちはことごとく事業に失敗し、借金を背負ったり事業破綻に追い込まれたりしている。その一方で当時虎たちから事業プランを強い言葉で否定され続けた応募者たちが成功をしている。一体何が彼らの明暗を分けたのか。

たしかに虎たちは屈強な精神で市場を開拓した先駆者であったかもしれない。だが目まぐるしく変わる市場原理が彼らを飲み込んでいってしまった。結局成功にあぐらをかいてしまってはいつか痛い目をみるということだろう。

それでは今回は、元ゴールドマンサックス役員、ホワイトハウス国家経済会事務局長および財務長官を務めたロバート・ルービンの格言で締めたいと思う。

世間において常識とみなされていることに対して、疑問を呈する勇気を忘れてはならない。健全な猜疑心こそ、ものごとの裏に潜む本質を見極める近道である。

-ロバート・ルービン-

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